その日、家にはお母さんとお父さん、小5の賢一兄ちゃん、そして小1の僕がいた。
外は大雨。だからどこにも遊びに行けない。
「今日のお昼はカサ増し焼きそばよ」
お母さんがケラケラ笑いながらテーブルの上にお皿を置いた。
見てみると本当に野菜ばっかり。特にもやし。
「野菜食べたら大きくなれるからね!あなた!ご飯よ!!」
「はいは~い!今行くよ!」
ギシギシと床を鳴らしながらお父さんが台所に来た。
「おっ今日の焼きそばもおいしそうだなぁ」
そんなことを言いながらお父さんは4つのコップに麦茶を入れる。
うちは貧乏だった。お父さんには借金があって、今一生懸命返してる途中らしい。
僕たちに借金は負わせられないと、いつも言っていた。
優しいお父さんに、明るいお母さん。いつも遊んでくれる兄ちゃんがいて、とっても幸せだった。
でもそれは突然崩れ去った。
ゴンゴンゴン
玄関からそんな音がした。
「あら、誰かしら」
お母さんがそう言って玄関まで走って行った。
僕は目の前の焼きそばを頬張るのに必死だった。
「隼人、よく噛んで食べないとまた母さんに言われるぞ」
隣で兄ちゃんがそう言った。
「そうだぞ、ゆっくり食べて大きくなれ」
お父さんがそう言って僕の頭を優しく撫でた。
その時、