『僕、先輩の手作りチョコ楽しみにしてるから』
隼人くんからそんなメールが来てから10日が経った。
今日はそこらじゅうで女の子たちがウキウキ。
男の子たちがソワソワ。世間で言うバレンタインだ。
「真子~あんた今年誰にチョコあげるの?」
あたしのカバンに入ってる3つのチョコを見てそう言う。
ササッとカバンの中のチョコを隠す。
「ちょっと秋、勝手に見ないでよ~!」
頬を膨らましながら秋に言う。
すると秋は
「だって見えちゃったんだもん!で?誰にあげるの?3つ見えたんだけど、1つは啓太でしょ?あと2つは??」
キラキラした目で聞いてくる。
秋のその目に弱いあたし。
「あと2つは…」
「わかってるよ!松永くんにでしょ?」
そう言って秋はニヤリと笑う。
はぁ、秋には隠し事はできない。
「うん、そうだよ。隼人くん。あと1つは隼人くんのお兄さん」
観念してそう言うと秋はニヤニヤと笑った。
そう、実は賢一さんからもメールで
『今年も誰からもチョコもらえないのかな~』
なんて来たから渡さないわけにはいかなくなった。
あの兄弟は似ている。本当にそう思った。