「まさか兄貴と先輩が知り合いだったなんて…」
キッチンにいる隼人くんが言う。
「あたしもビックリしたよ」
テーブルにスプーンとフォークを並べる。
なんだかいい匂いがする。
「俺もビックリしたよ。まさか隼人が連れてくる人が真子ちゃんだなんて思わなかった」
クククと笑ってコップを用意する賢一さん。
それにしても…
「2人はあまり似てないですね」
あたしがそう言うと隼人くんがフランスパンを持ってきて、お皿の上に乗っける。
なんだかレストランにいるみたい。
「よく言われるー。兄貴に身長取られたけど」
そう言って頬を膨らます隼人くん。
か、可愛い。
「お前は母さん似だからな。もう伸びないよ」
意地悪を言う賢一さん。
でもなんだかんだこの兄弟は仲が良いと思う。
さっき少し目に入ってしまった。
リビングの隅に女の人と男の人が仲良く寄り添ってる写真を。
その前にお線香があったことを。
きっと2人のご両親は亡くなったんだと思う。
あたしはそれ以上踏み込まなかった。