驚いて足を止めると、晃一も立ち止まった。

「そう。俺は……小学校のときは、明梨のことを仲のいい女子、くらいに思ってた。中学校では疎遠になったけど、高校生になって明梨が普通に話しかけてきてくれたときに、すごく嬉しい気持ちになったんだ」
「入学式の日に駅で会ったときのこと?」

 そのときの晃一のかっちりした濃紺のブレザー姿を思い出しながら言った。

「そう。それからもたまに他愛のない話をしたのを覚えてる?」
「うん。学校の授業のこととか、同じ中学出身の友達のこととか。でも、いつの頃からか、晃一はいつも難しそうな顔をするようになって、なんだか近寄りにくくなっちゃったけど」
「うん。そのときには……明梨の気持ちに気づいていたから」

 私は思わず息を呑んだ。

 つまり、私が誠一さんを好きなことに気づいていたってこと?

「どうして気づいたの?」
「兄貴のことを〝誠一さん〟って呼ぶようになっただろ?」
「うん」
「だから、明梨にとって兄貴は特別な存在なんだって気づいた。それと同時に、俺にとっては明梨が特別な女の子なんだって気づいてしまった。いつも明梨のことを考えてしまうのは、明梨を女の子として意識してるからだったのに、それまでそれがわからなかったなんて、ホント間抜けだよな」

 晃一がやるせない笑みを見せて続ける。