美佳の甘えるような声に背中を向けて、私はトレイを食器返却口へと運んだ。

「ごちそうさまでした」

 返却口の食堂のパートさんに声を掛けながらも、頭の中では別のことを考えていた。そう、さっき、陽太に言われたことだ。

『一緒にメシを食うなら、明梨みたいに好きなものを好きなだけ、おいしそうに食べる子がいいな』

 それを聞く限り、晃一が私のことを悪く思っていないのはわかる。けれど、それが友達としてなのかそれ以上なのかはわからない。

 土曜日のキスだって、思い出すたびにドキドキするのに、あれは晃一にとったら理想のデートの締めだったのだ。それに、日曜日はキスしたことには一言も触れなかった。今の今までだってLINEでも電話でも何も言ってこない。

 私たちのこの関係って何なの? いつまで続けるの?

 なんで私だけこんなふうに悩まなくちゃいけないんだろう。

 いら立ちを覚えながら、食堂のある建物を出て、次の講義のある校舎を目指して歩いていると、後ろから肩をポンと叩かれた。

「明梨」

 振り返ったら、チャコールグレーのVネックシャツにウォッシュド加工ジーンズ姿の晃一が、帆布のショルダーバッグを斜めがけして立っていた。