「『CityNoise』のしゅうちゃん」

「あ〜、ちょっと覚えてますっ。私、ジンちゃんのファンなんですけど、ジンちゃんがTimelessに入った頃に、確かCityNoiseって解散したような」

「香山さん」

「はい?」

「残業代あてにしてるんだったら、そろそろ働いたら?」

「…は〜い」

香山さんは、ヒョコッと肩を竦めた後、雑誌を元の引き出しに入れて、静かに仕事を始めた。

ま、楽しみがあるって、いい事よね。私もなんか趣味持とうかな。じゃないと、本気でこのままここに骨埋めるだけになりそうだもん。そのうち係長になって、課長ぐらいまで出世なんかしちゃったら、本当に、一人で生きていける女になっちゃいそう…。いや、キャリアウーマンを否定する訳じゃないけど、単に私はそんな風に生きていけるタイプじゃないと自分では思ってる。今でも夢は寿退社の専業主婦なんだから。