「今日はなんだかグッと主任との距離が近づいた気がして、嬉しいでーすっ」

と、香山さんが私の腕をグッと掴んできた。

「わかった、わかった。そうね、私も今日初めて香山さんが酒癖悪いって気がついたよ」

そう言いながら力強く腕に巻き付いた香山さんの指を解く。

「心を許してる証拠でーすっ。主任、これからも飲みに行きましょうねーっ」

「そうね、またね。あっ、香山さんの乗る電車来たよ。大丈夫?一人で帰れる?」

「大丈夫でーすっ。主任、お疲れ様でしたぁ」

「お疲れ様」

赤ら顔の香山さんを乗せた電車は直ぐに発車して行った。
大丈夫かな?…と、今更心配しても仕方ないか。大丈夫よね、きっと。酔っ払いの香山さんを一人で電車に乗せてしまった事がちょっと気にならなくもなくはなかったけど、間もなく来た電車に乗って私も家路についた。