「パパ? どうしたの? なんか顔暗いよ?」


「え? あぁ、悪いな、なんでもないんだ」


「疲れてるんじゃない?」


 あまり美貴には格好悪い姿は見られたくない。それは政明のプライドでもあり父としての意地のようなものでもあった。


 しかし、政明は今から断腸の思いで美貴に通告しなければならない重大なことがあった。目の前で無邪気にクッキーを口に放り込んでいる娘を、政明は重いため息とともに項垂れた。

「そいえば、話があるって言ってたけど話ってなに?」

「……う、ん」

「レセプションの新しい制服が届いたとか? でも、この前寸法図ったばかりだからそれはまだだよね」

「あ、あぁ……」

「じゃあ、入社式の前にシュミレーションさせてもらえるとか?」

 きっと自分を呼びつけたのは、グランドシャルムで就職するにあたっての何かの話に違いないと美貴はそう思っていた。

「美貴、今から言うことをしっかり聞きなさい」

「うん」

 すると、政明は意を決したようにすっと一回息を吸い込んでから口を開いた。

「お前の内定を取り消した」