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グランドシャルムは都心部の中でもひと際目立つ超高層ホテルで、高速道路からでもはっきりと見えた。到着すると、車は正面のエントランスではなく、従業員専用口へ向かった。 

「お嬢様、おかえりなさいませ」


「ただいま! これからパ……支配人のところへ行くの」

 ホテルグランドシャルムの令嬢を出迎えた従業員たちは恭しく美貴へ頭を垂れた。

「かしこまりました。お荷物はこちらでお預かりしておきましょうか?」

「ええ、お願い。あ、でもお土産袋の入ったバッグは自分で持っていく」

 本当のことを言うと、昔から美貴はあまり自分を特別扱いされるのは好きではなかった。なぜだか自分だけ異世界の人間のように思えて疎外感すら覚えてしまうのだ。

 美貴は荷物を早速預けると、政明のいる最上階の総支配人室へ向かった。