「しかもさぁ、さっきおねぇさんがいきなりドア開けたから肩にぶつかっちゃったんだよね、痛かったな~骨とか折れてたらどうする?」


 一人の少年が、骨が折れているという割には肩をパンパン叩きながら見せつけてくる。


「いまどきそんなベタなカツアゲ中学生でもしないんじゃない? 骨が折れてて治療費せびるなら、ちゃんと診断書持ってきなさい!」


 ビビっていても仕方がない。ちゃんと子供には言って聞かせなければと、美貴が勇気を振り絞って少年に啖呵を切ると、次の瞬間、彼らは腹を抱えて笑いだした。


「あっはは! 最高に面白いね、おねえさん」


「面白いけど、あんまりそういうジョーク、俺らには通用しないよ? おとな~しく言うこと聞いたほうがいいって」



 絶体絶命――。



 美貴は蛇に睨まれたかのように足がすくんでしまい、走って横をすり抜けることすらできなかった。まだ、目的地にも着いていないのに、こんなところで不良に絡まれるなんて情けないにもほどがあった。


 少年の手が美貴の肩をつかもうとして、美貴が身を捩ったその時――。