(うぅ……店から出にくいなぁ。でも、こんなところでもたもたしてたら黎明館に行くっていってある時間に間に合わなくなっちゃう)

 ちらっと腕時計を見ると約束の時間は十九時で、あと三十分ほどしかない。それにあまりの空腹に待っているのも煩わしく思えてきた。

 ぐっと拳を握り締めると、会計を済ませ勢いよくドアを開いて店の外に出た。

「いってぇ!」

 ドアを開けた瞬間何かにぶつかった気がしたが、美貴は構わずとっとと店を離れようとした。

(大丈夫! 大丈夫! だいじょ――)

「おね~さ~ん? ちょっと待ってよ、思いっきりぶつかったんですけど~?」

 何も見ないでただひたすら歩こうとしていたのに、不意に声をかけられて思わず立ち止まってしまったのが運の尽きだった。少年たちはにやにやしながら美貴を囲うようにして近づいてきた。

(え? な、なに……?)

 ひょいっといきなり下から顔を覗き込まれて美貴は顔に不快感を滲ませた。

「お、可愛い子発見!」

 そんな彼女を見て少年が茶化すように笑う。

「あ、あの! 先に言っておきますけど! 私、お金持ってませんから!」

 こんな年下に怖気づくものか、と美貴は睨むが、少年たちはまったく動じない。

「でも、さっきカード使ってたよね? そのカード、ちょっと見せてくれないかなぁ?」

(しっかり見られてるし!)

 自分より先に店に出たというのに、店の外からでも見られていたのだろうか。ドラマなどで不良に絡まれる主人公、というシチュエーションは何度か見たことがある。しかし、まさかそれが現実に自分の身に降りかかってこようとは思ってもみなかった。