「水野が送ってくれる……んだよね?」


 美貴は打診するように政明の顔色を窺ってみたが答えはノーだった。


「美貴、自分ひとりで行ってきなさい。新幹線だから東京駅までは水野に送らせよう」


(ええっ!? 新幹線に一人でって……)


 箱入り娘の美貴の移動手段はいつも水野が運転する自家用車だ。電車やバスなどといった公共機関はよほどのことがない限り利用したことがない。


「うぅ、パパ……私泣きそう」


「美貴、許せ。何事も修行だと思って、立派な大人になって帰ってくることを祈っている」


 にこりと笑う政明の笑顔がぎこちない。美貴はもう一度どん底に突き落とされたような気分になりながらも、項垂れて総支配人室を後にした――。