日本酒とつまみをいくつか頼む。
注文がまだなにもきていないうちに「やっぱりとられたか」と、勇が確信にふれた。

「もう少しデリカシーのある言いかたしてくれよ」

兄弟そろってデリカシーに問題があるのは、多分血筋だろう。

店主自ら「クリスマスなのに男2人かい」と言って、酒と突き出しの和え物を運んできた。
勇は「お、今日はツブ貝か」と頬を緩めて早速箸でつまんで口に運び、そして「まあ、仕方ないよな」と、勝手に納得している。

「なにが仕方ないんだよ」
「だってなんの説明もなく自分だけ彼女と元サヤに収まってさ、あげくに彼女はおまえの彼女からののしられて一人悪者だ。おまえ、最低じゃないか」