「彼女のことか?」

勇をちろりとみる。そしてそのまま数秒見合ったあと、優は大きく息を吐いた。

「最悪だよ」
「飯でも食いに行くか」
「母さんと行くんだろう?」
「いや、今夜は会社のクリスマスパーティーだ」

息子を気遣っての誘いかと思ったが、そうではないらしい。
勇は親しい人間以外で食事をすることが苦手だ。どうやらパーティを欠席する理由を探していたらしい。

「父さんは出なきゃまずいだろう」
「大丈夫。今日はスペシャルゲストで生美が顔を出すからな。みんなそわそわしてるよ」
「へえ」

ということは、クリスマスの夜は美弥と過ごさないのかと、意味のない安堵を覚える。しかしすぐに、まさか夜遅くに美弥のあの部屋に行き、朝はにぎやかな鳥の声に2人で耳を傾けるのか。
俺と美弥がそうしたように――そう考えて優は気持ちが沈む。