「いつから彼女を好きになった? 」
「優君が美弥さんと再会するずっと前から。中学生のころから憧れてたよ」

俺の方が先だ。俺は小学生のときから柏木美弥のチェリーの唇が好きだったんだ、と優は心の中で反論したが、もちろん口には出さなかった。

「まさか綾香さんと別れた後で美弥さんに迫ったりしないよね? 今回は、譲らないよ」

薄い笑みを浮かべているが、その目は真剣だ。

「今までお前になにかを譲ってもらったことがあるか? 譲ってやった記憶しかないが」
「そっか」

あはははときれいに口を開け、ひとしきり笑った後で、生美はまた冷めた目に戻って優を見た。

そして「じゃあね、怖い彼女によろしく」と、手をひらひら振って、今度こそ部屋を出ていった。