祥万はそんな明日奈に優しく笑いかけた。

「明日奈ちゃんはさ、若いし、きれいなんだから焦ることなんてまだないよ。
はるかちゃんが早すぎるだけだから、気にしちゃダメだって。
早いだけで、お相手はあいつだよ。
明日奈ちゃんは何とも思わないヤツだろ?」


「うん。でもなんだかはるかがうらやましくなっちゃって。」


そんな会話を交わしている2人の間に、幸樹が割って入った。


「けんかの原因は何なんだ?」


「へっ?」


「はぁ?」


「違うのか?明日奈が泣きそうな顔をしてるから・・・祥万が・・・違ったのか?」


「これだよ、もう。
明日奈・・・先生この調子だからさ。」


「ぶっ!ごめんね、祥万さん。
私、元気出たと思う。くくくっ。」


「明日奈が元気なかった原因はもしかして・・・俺?」


「わ、私、お掃除してくる・・・」


明日奈は慌てて自室にもどっていってしまった。
その場に残った祥万は、やれやれといった表情をして幸樹に言った。


「先生、明日奈ちゃんのこと好きなんでしょう。」


「なっ・・・祥万いきなり、何?」


「そういう素振りを少しでも見せちゃったのなら、早く何らかの行動してあげないとダメだよ。
じゃないと、嫌われたんじゃないかって不安になっちゃうんだからね。」


「もしかして、そういう話を彼女がおまえに相談してきたのかい?」


「まぁね。俺は恋する乙女の気持ちがわかるボーイだから。」


「じゃあさ、俺がライだったとして、今おまえを抱きしめて好きだといえば、おまえはうれしいと思うか?」


「あったりまえじゃない。
だけど、まだ好きって告白をされてなかったら逆に不安になると思う。
なんで、こんなことするのかなって・・・女ならなおさらね。
男どうしなら遊ばれても忘れればいいけど、女の子はそうわりきれるもんじゃないからね。
けどさ、先生の場合はさ、そこで立ち止まってはいけないと思うよ。」


「えっ?でもなぁ。
俺は地味な生物学者だし、おっさんだし、ここの大家なだけだし。
明日奈は国民的人気美少女なわけだし・・・もしさえない俺といて申し訳ないことになったりしたら・・・。」


「もう、先生。明日奈のこと好きなの?嫌いなの?」


「わかってるだろう。おっさんになると臆病になるんだよ。」


「ふう・・・仕方ないねぇ。
どうすれば、先生が思いきるきっかけができるんだかなぁ。
まぁ、とにかくがんばって・・・しか言えないけど。」


祥万はそういって自室にもどっていった。

幸樹はふぅ~とため息をついてから、研究室へ移動し、出かける準備を始めた。

(こういう時は気分を変えるのがいいよな。
大学へ行って論文の1つでも仕上げる準備をすすめるか・・・。
それがいい。)


幸樹は出かけるときに、玄関前で花を植えかえていたはるかがいたので、大学に行ってくることを伝えた。

それから、ライエルと祥万も同じ車で出かけ、輝彦も経営するホテルでの会合に出席するために出かけた。


「あら、気がつけば男性は使用人しかしないのね。
まぁ天気もいいから仕方ないわね。」