その日はみんな体を動かして子どもにもどったようにはしゃいでいた。

幸樹はなんとなく、母の真意がわかった気がした。

(母さんはトラップで誰かをいじめたり、こらしめようとしたんじゃなかったんだ。
装置の具合でこんなふうにみんなで楽しめるアトラクションとして使うつもりだったんだね。

にぎやかで、みんなが楽しんでくれるのが好きだった人だ。
部品の1つ1つにも工夫と愛情が感じられるものだった。

しかし、これを俺はセキュリティの装置として使おうとしている。
明日奈や俺たちを守るためだ。
母さん・・・もし、ヤツらがきたら助けてくれよ。)


「さぁ、そろそろおひらきよ。」


「そうだな、俺も明日は撮影会があるし、寝るわ。
祥万、いくぞ。」


「うん、じゃ、みんなおやすみなさい。」


「そろそろ僕たちも部屋にもどるか・・・ハニー」


「ええ。」


「ちょ、ちょっと待て。輝彦はもうはるかとそういう・・・仲になったのか?」


「はぁ?僕ははるかの実家ですべて許可をもらって、ここで同棲してるんだ。
結婚式の日取りも決めてあるぞ。
知らなかったのか?」


「し、知らなかった・・・。なんてやつだ。」


「お互いの親から離れて、ビジネスも私生活も充実させる。
それがお互いの両親から出された課題でもある。

あ、もし、おまえが明日奈と結婚でもすれば、おまえと僕は親戚になってしまうな。
まぁ、がんばってくれ。」


「くっ・・・輝彦のやつ、なんて手の早さだ。
はるかはまだ、成人式もやってないんだぞ。
犯罪だ!犯罪!!」


「いいなぁ。はるかは・・・輝彦さんにあんなに思われてて。
私は嫌なヤツばかりつきまとってくるんだから。」


「明日奈はあんなにワンマンで好きだって追いかけてくる男がよかったのかい?」


「えっ、そういうわけじゃないけど。
ストーカーとかじゃなくて、お互いをわかりあいながら好きと思える人だったら・・・あまり消極的な人でない方がいいなって思っただけで。」


「難しいな。わかりあいながら好きと思えるなんて・・・。
俺には理解しかねる。
君を襲ってくるヤツらのように、君を自分の永遠になるように殺したいなんて思わないけど、好きだから追うという素直な欲求はどこまで相手に伝えていいものやら・・・ごめん。」


「どうして先生が謝るの?」


「それは・・・俺が君を今すぐ抱きしめてキスしたいと思ってるのに、君を泣かせてしまって嫌われてしまうんじゃないかって恐怖が隣り合わせで、正直、苦しくなる。
ああ、何を言ってるんだ俺は・・・。
ごめん、おやすみ!」


「あ、先生・・・。もう・・・ばかっ!」