「誰だ?それ」


低く、低く。

まるで唸るような低い声が響いた。


「さくらー、そんなに睨んでやるなよ!湊の彼女だってよ!」


「唯斗さん、だから、」


「あ!名前ー!!彼女ー???名前は?」


唯斗さん、がグイッと寄ってきて、少し後ずさる。


どうしたら……?

湊に助けを求めるように、目線を移すと、彼は心底困ったように目を細めた。



「唯斗さん、あまり近かないでください。人見知りなんです。」


「近かないでってひでぇーじゃねぇかよー。仲良くしたいんだよ、なァ?」


「………べつに、」


仲良くは、したくないんですけど。


どこまで声が出でいたかは、わからない。

「なんてー?」と言ってるのを見れば、私の声は届いていなかったんだろう。



「彼女は、加賀里 愛さんです。」


久しぶりに、自分のフルネームを聞いた、な…。