後一歩で、あちらの世界。

その一歩を、踏み出そうとしたとき…








「空?」

ふと、私は立ち止まって、その声の主を探した。

「やっぱり!空!」

私の名前は、月姫 空(つき そら)…というらしい。

なぜ、らしいのかというのは…まだ秘密。
「そうらしいですが…。あなたは、誰…ですか?」
物好きよね。
ボロボロの服を着て、薄汚くて、
雨でぼとぼとにぬれたこんな私に、
話しかけてくるなんて。

「え…。な、何言ってるの?俺だよ!
ツバサだよ!」

そういいながら、自分の傘の中に私を入れてくれる。

「ツバサ…。すみません。知りません。
きっと人違いだと…」

すると、ツバサという人はショックな顔をしてから、すぐに顔をあげた。

「そんなはず…ない。だって、顔も、声も、空だし、その匂いも…空だ。
…君の苗字は?」

私の…苗字?