校舎の中もやっぱり広くて。

…理事長室。理事長室。どこだ。

あれ、ここさっきも歩いたような…?

あれ、もしかして、同じところを歩いてる?

…迷った。
他の生徒に場所を聞こうと思っても、
こんなに早い時間に来ている生徒なんて、きっといない。

…そう思った時だった。
「あれ〜?この時間に来てるの、俺だけだったはずだけど〜?」

気の抜けたように伸びた語尾。
なに、この人。まぁ、いい。
理事長室の場所を聞かなければ。
「あの、理事長室…どこですか?」

その人はスッと目を細めた。
「もしかして〜、転校生とか〜?」
…今小さく゛うわさの゛とかつぶやいたでしょ。

「まぁ、そういうものです。で、どこですか?」

「…さ〜ぁ?どこだったっけな〜?もし、君がキスしてくれたら、教えてあげるけど〜?」

ほんと何なのこの人。女たらし?変態?
それとも何?バカ?
すっっごくうっとうしいんですけど。
「ブッ。ハハハハッ。
俺にうっとうしいなんて言う女、初めて見たわ〜。もしかして、お前、俺の事知らねぇ〜の?」

初対面なんだから知ってるわけないでしょ!
「知りませんけど。いいから早く教えてください。」

睨むように見て言ったけど、その人は余裕そうに言った。

「俺のこと〜?」

「理事長室の場所です!!」