───翌朝───

ピピッピピッ。

目覚まし時計の音。
あぁ。夢ね。だって、こんなところに目覚まし時計があるわけなんてないもの。

こんな…路地裏に。

ゆっくり目を開ける。今日は雨が降りませんように。

…っ?!ここ…どこ!?

ゆっくり、ゆっくり、昨日のことを思い出す。

「夢じゃ、なかったんだ。」

ポツリとつぶやいた私の声は、再び鳴ったアラームにかき消された。

部屋を出て、リビングに行くと、いい匂いがした。

おいしそうな匂い。

「いい匂い…。」

そういえば、今日から私、学校に行くんだ。

「空。おはよう。よく眠れた?」
キッチンから声がした。

「…全然、眠れてないわ。だって、学校が楽しみだったんだもの。」

…ウソ。よく眠れたわ。
ベッド…フカフカのベッドで、眠れない人なんて、いないでしょう?

でも、それを言ってしまったら、昨日までの自分に、失礼な気がして。

「空。朝ごはん。」

……おいしそう。朝ごはんって、こんなに豪華なものなんだ。食べ物って色があるんだね。

そっか。そうだよね。あるよね。

「おいしそう…。いいな。私も食べたい。」
すると、彼が少しフリーズした。
「ツバサ…?」
「これ、空のだよ?」