ピロンッ。という音がして、やっとついたんだっていうのがわかった。

ドアが開いて、私は驚愕した。

だって…普通、マンションってドアがたくさんあるはずなのに、ドアが1つしかない。

「ドア…1つ…ですか?」

思わず聞くと、

「うん。このマンション各階、ドアは1つだよ?」

さも、当たり前だとでも言うように、サラッとそう言われた。

「あの…いったい誰が住んでいるんですか?」

私がそう聞くと、彼は反応を面白がるように言った。

「え?誰も住んでないよ?君が住むんでしょ?」

これまたサラッと。まるで悪ガキのように目をキラキラさせて…。

「はぁ───────っ!?」

私が…こんな私が…。

ここに…住む?

゛はい。どーぞ。゛

と言って渡されたそれは、紛れもなく
目の前の部屋の鍵で。

「君のものだよ?なくしたら、ダメだからね?」

…。
「…はい。」