しかも姫、なんて。わたしなんか平凡っていう言葉の代名詞みたいな存在なのに、姫なんて!とんでもない話だわ。

「とにかく人違いです!いい加減離して!」
「そうですね。恋人同士の語らいに、顔を合わせないなんて。野暮というモノですね。失礼しました、タマ姫」

ようやくわたしに回されていた手が解けて、一安心する。でも、油断してはいけない。いくら離れたにしろ、突然抱きついてきた変質者には変わりないんだから!

とにかく一度顔を拝んでやろうと、目をすわらせながらギッ!と変質者を睨みつけてやる。・・・って。
すっごくキレーな人。黒とも、青とも呼べるサラサラな髪の毛は適度に跳ねさせている。陶磁器のような、透き通る白い肌に生えるのは、紫紺の瞳。それはオニキスのような輝きを持ち、魅惑的な光を放っていた。見ていると、不思議な気分になりそうな。
中世から飛び出してきたような、紺の衣装。その上からでも解る。
引き締まった体つき、スラリと伸びる四肢。身長も180はあるかもしれない。だって、礼時よりも身長が高いもの。

「僕はリューと申します。タマ姫」
「っ、だっ、だだだっか、ら!わたし、は環ですって、さっきから・・・」
「いいえ、あなたは間違いなくタマ姫です。僕が以前一目惚れしたーーね?」

わたしの自慢のブラウンのロングヘアを一房掬うと、それに恭しく口付けを落とす。

「っ、いや!触らないで」
「どうしてです?あなたは僕のフィアンセですから、触れるのは僕の自由でしょう?あなたは、僕のものなんですから」


.