「待っていました、僕のプリンセス」
突然背後から何者かに腰を抱き寄せられ、甘く耳元で囁かれる。
その艶のある声音に、ぷつりと背中が粟立つのを感じつつ。
「ぎゃああああああっ、変質者ーー!!」
わたしは女の子という事すら忘れて、叫び声を上げ、じたばたともがく。でも、その背後から抱きしめるては解けない。それどころか、さらに強く掻き抱いてくる。
「そんなに暴れないでください♪」
「だったら離しなさいっ、変質者っ!」
「おや、変質者なんて心外です。
僕はあなたのフィアンセですよ、タマ姫」
はあ!?タマ姫っ!?
聞き捨てならない名前に、わたしはまたまた反論した。
「わたしはタマじゃないわよ、環よっ、た・ま・き!」
「ですから、タマ姫でしょう?」
クスクスとからかうように嗤い、変質者は色っぽい声で人を羽交い締めにしながらとても幸せそーに宣う。
「き、を忘れないでよっ、なんか猫の名前みたいじゃんっ」
.