すると、不機嫌そうに深瀬は黙り込んでしまった。もしかして、地雷だったとか?
しまったと思って話題を逸らそうと考えるも、とっさに思い付くものが何もなかった。
「ねえ、ふか──」
何かが触れる。おんなじ、きのこの匂いがする。その瞬間、ぴりぴりと痺れるような感覚。血が、全身が、熱を持つ。息もおぼつかない。
おかしい。苦しい。おかしい。
「これ、毒きのこだったかな」
「あはは。そしたら、2人で死ぬか」
そう言って、深瀬は小さく笑った。本当に毒に侵されて、死んでしまってもいいと思った。2人で、死んでもいい。でも、その前に聞いておかないといけないことがある。
「──何で?」
「好きだったから、って言ったら?」
ああ、ダメ。そんなんじゃ死ねない。だって、聞きたいことは山ほどある。
あの頃言っていた好きな人は誰だったのかとか、7年も本当に好きなままだったのかとか。あたしの好きにはどうして好きと返してくれなかったのかとか。
こっちはずっと、消せない想いに悩んでいたんだから。
でもとりあえずは、美味しいこの毒を食べてからにしようと思う。
あゝ愛しの毒キノコ