「剣道部入部、待っています」

部活で悩んでいたら、そんな声が聞こえてきた。

何故か頭に残った、この言葉。

よく通る声だなと思いながら、声の元へ顔を上げる。

すると……。

「よろしくね」

その人と目が合ってしまい、優しい笑顔でそう言われた。

みんなの目線が私に集中する。

「は、はい……」

恥ずかしくて、届くか届かないかくらいの声でしか答えられなかった。

でも、その人はニッコリ微笑むと他の部員の人達と立ち去って行った。

何故か、あの笑顔が頭に残っていた。

「私……剣道部にしようかな」

「え!?紗那、運動ダメって言ってなかったっけ?」

私の呟きに、隣に座ってた友達が驚いていた。

確かに運動は苦手だし嫌いだ。

だけど……。

あの笑顔が毎日見れるのなら、多少の苦しみなんて良いやと思った。

後で思うと、この時からだと思う。

……一目惚れ。

……恋だ。

しかも初めての恋だ。