さすがに今日のこの時間は人がいない、イヤいた。



校門をくぐって、右側。
レンガの柱にソイツは寄っかかっていた。



「お、やっときた」



そう言って、耳につけていたイヤホンをはずす彼。



『いいかげんストーカーっぽいよ。優(ゆう)』



水嶋優。

小学6年生の中間頃にこのあたりにやってきて。

中1から今までなぜかずっと一緒のクラス。



そして。



「ストーカーじゃなくてお前が好きだって何回言えばわかるんだっつーの」

『はいはい。ありがとう』

「軽すぎんだろ」

『お前がな!』


クラス一緒くらいなら別にいいんだけど、ずっと付き纏ってくる。

おまけに、好きだ好きだと毎日連呼。
→もう聞き飽きた。



「つか、コンビニ行かね?式とかもう出なくていいだろ」

「それは同感だけどアリスは行きませーん。行くならお一人でどうぞ寂しく」

「そんなこと言わずに行くぞ~。しょうがないからアイス奢ってやるよ」



コンビニに用事なんてないあたしは優を置いて屋上でサボろうとしたが失敗。

腕を引っ張られ、引きずられるように歩かされる。


この時期にアイスとかいらないんだけど。

まだ寒いんだけど。

とんだイヤガラセなんだけど。



寒がりのあたしのこの黒のカーディガンを着込んで、黒タイツをはいた暑っ苦しそうなスタイルが目に入っていないんだろうか。