side.優



「…どん!」



いつもいつもつっかかってきてうぜぇ教師のおっさんが笛を鳴らす。



それと共に足を前に動かす。

昔から、自分で言うのもあれだけど勉強も運動も人より上手くできたと言える。



案の定俺の前には誰もいない。



だが…、



「優ー!あっれれー?おそくね?」



俺の隣に並んだかと思えば、そう言って俺のことを軽々と抜いて言った女の名前は御影アリス。俺の幼馴染だ。

つっても、俺がいつも後ろについてただけだけども…。



「はん、んなバカなことあってたまるか!アリス、テメーなんてな俺様の足元にも及ばねぇってんだよ!」



はい、嘘です。
絵に描いたように何もかも卒なくこなしちまうコイツには適う気がしません。いつも。



アリスっていう存在は俺からすれば神に等しい。俺にとってはそれぐらい尊い存在。



初めて出逢った日から、俺はずっとそう思ってきた。



願わくば隣にいたい、なんて思ってたりもするがたぶんそんなことは叶わない。

だからいつも一歩後ろにいた。
幼馴染として。今までずっと。



何度も何度も、数え切れない程行ったアプローチは全て本気だとも捉えられずに流され。



俺を見る瞳は、男を見る瞳どころか親しい友人を見る瞳でもなく、幼馴染の優を見る瞳だったが最近ではストーカーを見るように汚いものでも見るかのような視線をよく感じる(気のせいか?気のせいであってほしい)。



「ふふふ、じゃついてきてねー」

「………」



え、なんだよ今の!?
ふふふってやばー、かわいいわー。

一瞬、"はーい。ついていきますどこまでもー"とか言いそうになったじゃねぇか。
危ない危ない。



たまにめっちゃかわいい言動してくるから困るんだっつーの。ま、本人には絶対言わないっつーか言えねぇけど。