一時限目はなんと朝から体育らしい。
ジャージに着替えるべく、更衣室へ行くためにクラスメイトがどんどん教室を去っていく。

しかも長距離走とかマジやってらんない。



そんなワケでどこでサボろうかなぁ、とか考えてたんだけど。



ガラララララ___



「御影アリス、水嶋優!おめーら体育の授業じゃいっくらテストができたって単位やらねぇからな!留年したくなけりゃ出やがれよ!」



何かとつっかかってくるいつもダッさい真っ赤なジャージを羽織っている体育教師の松村~まつむら~こと"まっちゃん"が走ってきたのか息たえたえで怒鳴り散らす。



まあ、あたしとしても留年は勘弁なわけで。



「えー、まっちゃんのイケずっ☆」



と言って、ジャージの入ったバッグを持って教室をあとにする。

後ろでは優も「イ、け、ず♥」とか言ってる。パクんな、キモイ、くたばれ。



「まてよアリス」

「なに?」

「サボんじゃねぇぞ。お前がサボると俺がまっちゃんにグダグダ言われんなかんな」

「それお互い様。こないだ優がバレーサボったときあたしがガミガミ言われたんだからね」

「あ"ん。だったらアリスが野球サボったときは俺がビシバシしばかれたんだよ。あのくそじじい、俺がバッターのときだけでてきて剛速球投げてきたかんな!?大人気ねー」

「だったら優がダンスサボったときなんてね……」





いつの間にか更衣室に到着していたけど、言い合いが止まらずチャイムが鳴るまであたし達はくだらない口論を繰り返していた。



キーンコーンカーンコーン___



「やっば」
「やっべ」



更衣室に駆け込んだあたし達は、隣り合った男女の更衣室の壁越しにまた文句を言い合う。



「優のせいで遅刻じゃん!」

「お前のせいでまたまっちゃんにうっせーこと言われんじゃねぇか!」



この学校の体操着は、自分の好きなTシャツに指定の黒に男子は青、女子はピンクのラインの入った長袖長ズボンのジャージを羽織る。



あたしは白地にピンクと黄色の模様が入ったオシャレTシャツの上にジャージを羽織り、お腹あたりの中途半端な位置までファスナーをしめた。

ズボンは裾が長いこともあるし、なんとなく邪魔なので七分くらいの丈までまくる。

おろしていた長い髪を編み込んで纏めあげれば完璧。



外に出れば、優が壁を背もたれにして立っていて瞳を閉じている姿がなんとも様にやっていて腹立つ。



身長180cmというコイツは足も長くスタイル抜群でこんな在り来たりなジャージも悔しいけどカッコよく着こなせている。



「おっせーよ!つか相変わらずお前が着るとブカブカだなー。だからSSサイズ買えって言ったのによー」



SSサイズ。
この学校の指定店に置いている中で一番小さいサイズだったけど買う人は一年に一人いるかいないからしく、あたしの小さなプライドが許さずあたしは普通にSサイズを購入した。



本音を言うとMを買いたかったけど、一緒に買いにきていた優と店員さんに割と必死で止められたのでやめた。



何気なく乙女であるあたしの心を傷つけた優には、あたしからスネ蹴りという罰をあたえてやった。



急いだこともあって遅れている時間は5分程度。これならまっちゃんもそこまで怒らないことだろう。