「………」
こんな雨の中傘もささずに
座り込む女に俺は思わず
声をかけようかと思った。
でも、泣いているのかと思い
ただ足を止めることしかしなかった。
「……っ」
すると俺の影が女の足元で
止まったことに気付いたのか
ゆっくりとこっちを見た。
思わず息がつまった。
「お、おい…っ」
「なに…」
真っ白な肌には不釣り合いな紫。
青紫に変色した腕の痣は
痛々しく、生々しかった。
「それ…喧嘩したのか?」
「…そうだよ」
瞬時に嘘だと思った。
汚れた制服に虚ろな瞳。
思い浮かんだのは、
性犯罪の、三文字。
「お前、ここは危ないから
ちょっと来い」
「っ、ちょ…なにが?」
気付けば痣の無い手首を掴み
再び来た道を引き返した。