ザザァァアァーーー…



梅雨も明け切らないジメジメとした空気。

沢山の傘を避けながら俺は
繁華街をうろついていた。



ウザいくらいのネオンの光に
人の声も余り聞こえない程の雨音。



そんな日を、俺は嫌いじゃなかった。



だが、ふと足を止めた俺は
何かを忘れている気がした。



「……っ、げ…まじかよ…」



先ほどまでいた友達の家に
携帯を忘れたことを思い出し
思わず舌打ちをした。



「……取りに戻るか…」



ずぶ濡れな俺は
今更濡れることなど気にせず
繁華街を引き返した。