そして、人間には到底真似できない動きで優雅に水中を踊る。

 プクプク・・ プクプク・・

それは、彼女からは発する事の無い水中で生きる呼吸の音。

それが聴こえるのは、恐らく―――・・・


「貴方、私たちの間ではとても有名なのよ」

「俺を知っているのか?」

「知らないわ」

「人魚とは不思議な事を言う生き物だな」

「貴方は知らない、」

「私たちが貴方の話をするのは、」

「ずっと昔私たちを食べた人間に似てるから、」

「貴方も、食べるの?」

「魚嫌いなんだ」

「あら失礼ね。私は人間嫌いよ」

「でも君は嫌いじゃない」

「奇遇ね、」

「帰るわ、」

「また」


“また”。それが来ないのは分かっていた。

けれど、何時か”また”。会うのも分かっていた。





プクプク・・ プクプク・・