「私は 水 よ」
「…春だ」
互いに一応名乗りはしたが、彼女はその下半身と同じ色の瞳で睨む、とは少し違うが俺の身体を射止める様に鋭く見ていた。
俺はその瞳の力強さにまんまと射止められ、足を地面から浮かすことが出来ずにいた。
「お前、人魚と呼ばれるモノか?」
「当たり、外れ、どちらなら信じるの?」
その時代の俺は、今の俺には少し欠けてしまっているが”負けず嫌い”な性分で。
「お前が俺の立場ならどちらを信じる?」
質問を質問で返してきた質問にまた質問で返したやった。
「…当たりよ」
鋭い瞳を俺から逸らして自分の座っていた大きな石から水の中へ向かって彼女はしなる様に落ちていった。