俺と彼女が出逢った時には姫様はまだ眠りについてはおらず、よくふらりと城から抜け出し三五月様が『困ったお方だ。』と温顔に哀惜の色を孕ませながら探しているのをよく見かけた。


お二人は辿り着いたというその日に在る事は教えてくれはしたが、何処に在ってどう行けばいいのかは教えてくれなかった。

幼子が「どうしてですか?」と問うと、姫様がその艶やかで美しすぎる顔を幼子に近づけその場にいた人全員の鼓膜を優しく叩いた。



「 ───・・・ 」



結局その幼子も俺もその他の誰も辿り着けはしなかったが、その川が国を流れ海と交じり合った広く緩やかな場所で、彼女と出逢った。





「ねえ、誰?」

「…お前こそ。」


下半身が大きな碧い鱗と海豚の様な尾鰭をもった───・・・人魚の彼女に。