(うるさいのは注意するのになんでイヤホンと漫画は注意しないんだよ)


先月行われた席替えで左端の一番後ろの特等席を手に入れた俺は、彼が教師に怒られるのを見る度にそう思う。


「相変わらずお前は涼しい顔しとんのー。そこがモテる要因なんかねー。」


怒られても尚その口を閉じないのは口数が少ない俺からすれば疑問でもあり感心でもある。いや本気で感心はしていないが。


「…止まないな」

「見事に無視ですか。華麗にスルーですか。右耳から左耳へ抜けてますか。」


既に両方のイヤホンを外して身体をこちらに向けている友人を本人が言う様に無視して、俺は閉められて少し曇り始めた窓を見た。

白く曇る窓の向こうでは、大粒の雨が中庭に降り注いでいる。


(置き傘しといてよかった)


「山村!!お前いい加減にしろ!!」


現文の先生の声が遠くの方で響いた。