「ただいま~。」

買い物袋をぶら下げて帰ってきた男はアレク・ゼイン、現在家出中の吸血鬼である。

「お帰り。」

パソコンから顔も動かさず迎えたのは蛟 銀杖(みずち ぎんじょう)、こちらも現在家出中の財閥の娘である。

「外あちぃ~。」

アレクが扇風機の前を陣取る。

「夏だからね、さすがにシャツとハーフズボンでも熱いでしょ。」

「まぁな、
そんなクソ熱い中カッターシャツ着て長ズボン履いてておまけに髪長くしてるやつの方が熱いと思うぞ、熱くねぇの?」

アレクが銀杖の姿を見ながら言うが本人は熱がる様子もない。

「全く。」

「低体温症の俺でも熱さ感じてんだぞ、あれか?
心頭滅却ってやつか?」

「そんなわけないでしょ…、
冷房の下だから熱くないんだよ。」

銀杖がエアコンを指差す。


「風邪引くから止めろ。」