沙梨の病を白黒つける為に、俺はある市立図書館へ向かった。
そして、そこでモルキオ病という病気を見付ける。
同時に、立浪さんと出会う。
立浪さん曰く、モルキオ病は長生きできない。
それを深雪に話し、二人で悩んだ。
それから立浪さんに相談し、やはり疑いを結論にしなければいけない事になる。
立浪さんに都内の病院を紹介してもらった。
悩みに悩みながら、白黒つけようとした頃、島津から渡されたパンフレット。
『・・・これは、何だったんだろう?
何故、俺達二人をわざわざ夫が経営している旅館に招待したんだ?』
『私もずっと悩んでた。けど、多分、そのまんまの考えでいいと思う。
島津なりに私達に感謝してたんだと思う。
我が子を自分の代わりに育ててくれてって。
そうすればさっきの拓の言い分も当てはまるし。情が捨てきれないって話』
『確かに。つまり、何の企みもなかったわけか』
『逆に考えるとちょっと頭くる部分もあるね。
さっき話したローマ字の事。
旅館の名前を出しても、アナグラムに私達は気付かないだろうと思ったんだろうね』
『仕方ねぇよ。マジでその時は気付かなかったし。
俺なんか深雪から説明されるまでずっと分からなかったと思うし』
旅行を純粋に楽しんできた後、沙梨の病に白黒つける為に都内の病院へ。
警察側が少しも役に立てていないからという事で、島津が都内までの道程を世話してくれることになった。
しかし、これも今考えれば、我が子の診断をもう一度聞きたかったからとしか思えない。
再度検査を受け、もしかしたら治療出来る病かもしれないと・・・。
そんな小さな希望の火が島津の中で確かに燻っていたのだろう。
そして、沙梨の病の結果が出る。
『未確認の病と。前例がなく、確かな治療法がない。
どうしようも出来ずに落胆する俺と深雪の前に・・・』
沙梨の実の母親が立った。
【関係ない】
【沙梨は俺達の子供】
【今まで通り】
この言葉達は島津により破壊された。
『他の夫婦に育児を任せても、沙梨は結局助からない。
そう判断した島津は、沙梨と血の通っていない俺達を沙梨から引き離す事に』
警察という看板を武器に島津は戦った。
そして、俺達に圧勝した。
『私の子供を助けられないのなら、あなた達は用なしよ・・・みたいにな』
俺は敢えて皮肉を口走った。
怒りの感情を他の三人に植え付けさせるためじゃない。
島津が犯した事を、もう一度理解させる為だった。
無論、俺に言われるまでもなく、皆分かっていた。
『そして』
俺は警察に反抗した際暴力を犯した。
傷害罪により現行犯逮捕。
事情聴取を受ける間もなく留置場へ押し込まれた。
勿論、島津に対する怒りだけで一杯だった俺は、
反省の色なんて少しも見せなかったし、毎日のように反抗した。
当たり前のように裁判にて敗訴し、刑務所へ入る予定だった。
『その間に、私宛に島津から手紙が送られてきた。
そこで私は島津が沙梨の実のお母さんじゃないのかって疑い始めた。
そこからはさっき話した通り、立浪さんに手伝ってもらって証拠集めを』
入所当日。
深雪が決定打を俺に打ってくれた。
その、【証拠】という弾丸は今・・・ここにある。
『そして、現在に至るわけ』
『なるほど』
親父がこめかみ付近を人差し指でなぞりながら話し出した。
『拓也、お前は悔しいだろうが、あの島津という警官に直接会う事は、
恐らくもう出来ねぇぞ』
『!・・・何で?』
『もうその事実は警察も知っているんだろ?
そうじゃなければお前は釈放されていない。
つまり、島津はもう覚悟決めて、刑務所へ入る気で居るだろう』
『・・・入所する前に隙を見付けて、後ろが殴り倒してやる』
『馬鹿言うな。それこそお前捕まるぞ。警察の中に居た犯罪者だ。
常に警察に【守られている】と思え』
『・・・じゃ、俺達はこれだけの証拠を持ちながら、
何の復讐も出来ないと?』
『それ以前、その証拠がなければ島津は捕まっていない。
深雪さんが集めた、大量の証拠を持ってさえ、
牢屋にぶち込むくれぇしか出来ねぇわけだ』
『・・・じゃあ、俺達は』
『あぁ。完全にマリオネット状態だったんだよ』