私の周りの女子たちはそれぞれ想いの人がいるようで、休み時間の度に恋愛話に花を咲かせている。
私はその話で盛り上がると大抵、その女子の群れから遠ざかり、自分の席に座るのだ。恋愛話はどうも苦手だ。



「なんかこう、他にもっと話題はないのかと思っちゃうね」

「そういうお年頃ってヤツなんじゃねーの」



相槌を打ったのはクラスメイトでもあり、唯一の男友達の高階雅志だ。
席が近いこともあり、よく話すようになった。高階はぐでーっと机に突っ伏しながら口を開く。



「浅葱は、初恋もまだな感じ?」

「いやー…そんなわけじゃ、ないけど…」



流石に16歳にもなって恋のひとつやふたつ、したことがないなんて言えない。

ついこの間自覚した夏樹への感情をそのひとつとして入れていいのだろうか。もし入れたとしても、私は失恋確定なのである。

だって、夏樹は恋愛沙汰に疎い私でもわかるぐらいにお姉ちゃんが大好きなのだ。
そんな夏樹の好意に気付かないお姉ちゃんは、私と同じ血が流れてるのだと言わんばかりに向けられた好意に気付かない。

夏樹は知らないだろうが、お姉ちゃんには学生の頃から付き合っていた人がいるのだ。