目が覚めると、知らない部屋のベッドで寝ていた。
「ここは? どこ?」
「やっと目が覚めたな」
「えっ?」
視線を上にしてみると、そこには先生がいた。
「先生。」
「お前の家族に連絡したら、まだ家に帰っていないって言うから、つれてきたんだ。」
「はい。今日は母がいない日で、家を空けているのがほとんどです。」
「そのようだな。」
「大丈夫か?」
「はい。ご迷惑をおかけしました。」
「お前は可愛いって男どもが騒いでいたから、気を付けるんだぞ!!」
「そっ、そんなことないですよ。私なんかが、かわいいんだったら、この世の全ての女性が可愛いってことになって、大変ですよ‼」
「そんなことないって」
「いいえ‼先生も、思わせ振りな態度はやめておいた方がいいですよ!」

沈黙が続いた。
10分ほどして携帯がなった。
母からだった。
もう家に帰れるという安心感と、まだ、ここにいたいといった、不満足な感情が、せめぎあっていた。
でも、その日はすぐに家に帰った。
先生も一緒に…。
とても気まずかった。
先生の車は、シトラスの香りがしていた。