けれど、進んでも進んでもそれらしい場所が見当たらない。
たまに古い家を見つけても、そこはもう物置に使われていたり、空き家だったりする。
鈴の家も清人の、家もそれらしいものが見当たらなくて
不安になって
すぐ先にあった一軒家のインターホンを鳴らした。
すると、中からこの家の奥さんだろうか、中年の女性が出て来て
見知らぬ俺を怪訝そうに見つめた。
「…どちら様?」
「あの…この辺に新里さんのお宅と田畑さんのお宅はありますか?」
新里は鈴の苗字で田畑は清人の苗字だ。
「新里さん?いえ…まったく知りませんね。
でも…田畑さんは…。」
言いながら俺をまた、怪訝そうに見つめる。
もしかしたら不審者だと思われたのかもしれない。
「新里さんと田畑さんの友人の孫なんですが…あのっ…」
「田畑さんってどちらの田畑さんのことでしょう?
田畑という苗字はこの町内には数件いるんですよね。」
参った。
完全に怪しんでいる目で見られている。