『一ノ瀬さ、文化祭までに彼氏作ったら?』

『は?』

『そしたら1人になる事だってないじゃん?』

そりゃ…彼氏作ったら1人になる事はないんだろーけどさ…

『あたしが彼氏?』

『そーそー一ノ瀬だって彼氏の1人か2人欲しいだろ?』

[彼氏]名の通りリア充への第一歩だ。

でも、あたしに彼氏が出来るとは思えない。
本人が言うのだから出来る確率は0に近い。

『あたし…リア充がイチャイチャしてたりするとイラっとする事あるけど、欲しいなんて思った事ないよ?』

そう、そもそも彼氏が欲しいなんて思った事がない。

円に彼氏が出来た時も、カヨが彼氏がいたと聞かされた時も「あたしだけいない」と、思ったまでで欲しいなんて…

『はあ…馬鹿ね…イラっとしてる時点で羨ましいと思ってるんじゃないの?』

『羨ましい??』

『うん!自分では思ってないと言い聞かせてるだけ!本当は自分もあーなりたいって思ってるんだよ!』

『自分も………』

欲しいか欲しくないかは自分でも不明だ。だが、作るとしてもあたしには好きな人がいない。

『うん!あたし応援するからさ!柚木だっているんだし!気合い入れてこーぜ!』

『だねっ!ありがとう!カヨ!』

『いいって!いいって!』

手をヒラヒラさせながら前を向くカヨの背中を見つめながら思った…

カヨや円がいて良かった。

『〇※□〜△〜〜』

それからは、ずっと自分の世界に居て先生の話は全く耳に入って来なかった。

HRが終わってクラスの人達が次々と教室から出ていきどんどん静かになっていく教室に

あたしとカヨと円で、話し合いをしていた。


『ぇええええええ!!!!』

物凄い大声で円が叫ぶ。

『あはは』

苦笑いのカヨ。

『…』

自分の世界にいるあたし。

『山本ちゃん彼氏いたの?!』

『あはは〜ごめんねーあたし柚木達には言ってるつもりでいたから』

『そーだったんだねーでも言ってくれて嬉しい』

『…』

『柚木…あんた…本当に天使!』

『あはは!山本ちゃん面白ーい』

『柚木…物凄い棒読みだよ!』

『…』

『…』

『…』

『『『…』』』

『『え?』』

カヨと円がはもる。

『愛乃ちゃん?』

『一ノ瀬ー??』

『…』

『『おーい』』

『ん?』

すっかり自分の世界にいたあたしは2人の声が届いて居なくて気づかなかった。

『愛乃ちゃん…調子悪いの?あ!腰が痛いの?!』

『え??』

『愛乃ちゃん!それは大変だよ!病院に行こう!!!』

『え?え?ま、円?』

勢いよく椅子から立ち上がる円をあたしはただただ見る事しかできず、口をポカーンと開けてるあたしと、今にでも吹きそうなお口を抑えながら肩を震わせているカヨ。

『えーと円?』

『ふっぷっはははははは!!柚木やべえ!おもしれえー!!』

『え?え?愛乃ちゃん腰は?』

『腰?大丈夫だけど?』

『え?!そうだったの!私愛乃ちゃんが何も喋らないし、一点ばっか見つめてるから腰がまた痛くなったのかと…』

『ふっはははは!柚木は心配症だな!』

やっと現場を把握したあたしは苦笑いになる。

『あはは…円ありがとう!腰は大丈夫だから!』

『…本当に?痛くなったら言ってね?』

『おーけーおーけー!』

『で?一ノ瀬は何を悩んでた訳?』

さっきまで大笑いをしていたカヨが半泣きで聞いて来る。

『んー…まあ言うまでもない悩みなんだけど』

そして、あたしが悩んでいる事を円とカヨに伝えた。

[それは彼氏を作る前に好きな人がいない事。]