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「健吾さん!
メイクを教えてください!」

「この間も言ったけど、聞く相手間違えてるからね」


 遅めの夕食をとっていた健吾さんは、箸を止めて苦笑した。

 ぼっち脱却を図るべく、正座して帰りを待っていたのだ。

 今私が頼れるのは、健吾さんしかいないのだ。


「この間あげた雑誌は?見たんだろ?」

「見た。
さっぱり意味がわからなかった。
もっと初心者向けにしたほうがいいと思う」

「……そうかー、そこは反省点だな。
貴重な意見、感謝感謝」


 健吾さんは雑誌編集者をしている。

 転校初日泣きついた私に、自分が編集を担当しているファッション雑誌を数冊くれたのだ。

 だけど、こちとら生粋の田舎者。

 化粧のケの字も、オシャレのオの字も縁がなかった私が理解できるものではなかった。

 こちとらずっと制服とジャージで生活してたんだからな!