「えっ?それって良くないこと?他の人を不愉快な思いにさせるかな?」



 仁くんの話をして榊田君に不愉快な思いをさせたのかもしれない。


 今までの出来事を必死に思い出そうとする。



「そういうことじゃない。お前の知らない仁だっているかもしれない。仁に裏切られたらどうする?裏切られた途端、お前は自殺しそうだ」



 裏切る?



「そんなに仁を崇拝してんな」



 仁くんが私を裏切る?



「そんなことありえないよ。仁くんが私を裏切るなんてありえない」



 私は思わず苦笑してしまう。



「それだよ。なら万が一、裏切られたら?お前は死ぬか?」



 彼は、盛大にため息を吐く。



「万が一?ありえない。だから死なない」



 考えるまでもなく、答えは出る。


 苛立たしげに榊田君が口を開こうとするのを遮った。