「かなりや組か…」
年長さんになって、
私はかなりや組、拓人くんはひばり組になった。
それから拓人くんと遊ぶことも
話すこともなくなった。
それから1年経って小学校に入学した私は
また拓人くんと同じクラスになった。
「拓人くん!」
「…?」
「拓人くん、また同じクラスだね!サッカーってまだ…」
「誰?」
「え…?」
拓人くんは1年で私のことをすっかり忘れてしまっていた。
『同じ幼稚園だった子』
拓人くんの中で私はそんな存在だった。
それでも私は拓人くんと話したかった。
もう一度幼稚園の頃みたいに遊びたかった。
サッカーの話をたくさん聞きたかった。
「好きなの?恋してんのか、小沢に」
小学校に入学して少し経った頃
拓人くんの話をして沙希ちゃんにそう言われたとき私は自分が初恋をしていることに気がついた。
でも、それから私と拓人くんが前みたいに話すことは二度となかった。
「小沢、彼女出来たってさ。莉央」
「ふーん」
そう沙希ちゃんから聞いたのは
小学5年生の時だった。
莉央…りっちゃんは小学2年生の時からの友達だった。
拓人くんはいろんな可愛い女の子からモテた。
りっちゃんもとてもとても可愛かった。
拓人くんのこと、諦めたわけじゃない。
でも自分のものにしようとは一度も思えなかった。
今思えば最初から逃げていたのかもしれない。
拓人くんが幸せになれればそれでいい
気付けばそんな綺麗事を思うようになっていた。
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