「はい、じゃあ数学のテスト返します。青木ー…」
テスト返しの時間は魔の時間。
「池村」
「はい」
「今回もよくがんばったな」
「…ありがとうございます」
「池村さんきっとまた学年最高点だよ」
「塾の娘はいいよね〜勉強しなくても良い点取れてさあ」
良い点、良い成績。
その頃、それを認め褒めてくれるのは先生とゆずだけだった。
親はそれが当たり前のような態度をとるし
クラスの子は私のことが気に入らないというような態度だった。
その日、私は塾を休んだ。
休むと言っても家の1階が塾だから降りなかっただけだけど。
トントン
「池村ー」
塾の授業が終わったぐらいの時間に
私の部屋のドアを誰かがノックした。
「誰?」
「多田、だけど」
「あぁ、」
ガチャ
「何の用?」
多田雷希 は学校で同じクラスの
小学校の時から塾に通ってくれている子だった。
「塾長がプリント渡してくれって」
塾長、つまり私の父。
「あぁ、ありがとう」
「お前さ、」
「ん?」
「学校でのこと、あんなの気にすんなよ」
「え?」
「周りの奴ら、お前にうだうだ何か言ってっけどあんなのやっかみってかひがんでるだけなんだしさお前はお前でいいじゃん」
「…」
「まぁー頭いいのは俺もなんだよとは思うけどさ、それがお前じゃん?他の奴らのことなんかほっとけって」
「…ありがとう」
「ん。じゃ、俺帰るわ、また明日」
「あ、うん。明日」