五年なんて大した時間じゃないと思っていたが、五年という時間は世界を変えるのに充分な時間だった。世界と言っても、ナスカの世界だけだが。
ナスカが呆然と外の景色を眺めていた時、突然部屋のドアがノックされた。
コンコンと、久し振りに聞く音だ。少し前なら、ノックもなしで無遠慮に開けられていたから。
「どうぞ」
外の景色からドアへ視線を移し、よく通る声で返事をする。