図書館前の駐輪場は、やはりいつもより密度が薄い。

雨の日は何かと不便な乗り物だ。ふだんこれで来ている人は、今日は来るのをやめたか、徒歩で来ているのだろう。

横目で台数を数えていると、強烈な色彩を放つ自転車が目に入った。




まわりの自転車の疲れた色合いを払拭するかのような、猩猩緋。
まあ、これはこれで疲れる色ではあるけれども。




この自転車は去年から毎日ここに停まっている。これだけ目立つ色なら覚えてしまうのは仕方が無いだろう。


雨なのにお疲れ様でございます。


運動部のクラスメイト達によりも、よっぽど労る気持ちが芽生える。

エントランス前。未だかつて一切の盗難が無い傘立てに自分の傘を押し込むと、少し重いガラス扉を押して館内へ入る。

雨の匂いが消えて、陰鬱な色の空が消えて、そこには僕のおしゃべりな友人たちが静かに列をなして並んでいる。

今日は、美術史の本が読みたい気分だ。何となく。