僕の学校の最後の終業ベルが鳴る時間は、他の近隣の学校よりも重めにワンテンポ遅れる。60分授業なのだ。なぜならトップの進学校ですから。

それが鳴り終わると、実は全国模試の偏差値が75だとかいうお化けみたいな男子生徒も、一瞬前まで帰国子女よろしく超ネイティヴ発音でお手本のような自由英作文を音読していた女子生徒も、脳筋みたいにエナメルバッグを抱えて部活のために教室を飛び出して行く。

雨なのにご苦労様なことで。

運動部の気持ちはちっとも分からない僕は、そんなことを思いながらいそいそと市立図書館へ向かうことにする。

大抵の学校がそうであるように、僕の学校にも図書室はある。それも結構立派な。

でも、どうやら僕にはこの空間が向いていないらしい。

なにぶん利用者が幅広く、座席が適度に埋まりづらい市立図書館に慣れているせいで、知人が近くに来ただけで読書に集中できない。

そういう僕の繊細さも、図書館通いの習慣が生み出したのだとしたらけっこう恐怖だ。

とにかく、玄関口で革靴に履き替えた僕は鞄を8割は守れる大きめの黒い傘を開いて、いつもの道のりを歩き出した。


こんな雨の日は、早く図書館に入りたくなる。