やはり、習慣というものは恐ろしい。


いつも通りの時間に家を出て、いつも通りの時間に校門の前に辿り着いたは良いが、校門の方はいつもと同じではなく、無情にも僕の行く手を阻んでいた。

これが人の子のすることかと思ったので、守衛室に異議を唱えに行くと、疲れた顔をした守衛が可哀想なものを見る目をしながら単刀直入に納得しざるを得ない理由を述べた。

雨が馬鹿に強いとは思っていたが、どうやら今日は警報が出ていたらしい。

道理で人っ子一人歩いていないわけだ。

革靴が濡れる感触に眉をひそめながら、何となく図書館のことを考えていた。

ほとんど毎日来ていただけあって、三日間空いただけであの場所が全然違う場所になっているような気すらする。

いつものあの席に彼女は座っているだろうか。

いや、原則警報で休校になった場合、生徒は自宅謹慎を求められている。

このどうしようもない世の中、大多数の生徒と同じく彼女も喜んで引きこもっているはずだ。

彼女があの席に座っていない可能性が僕の頭を掠めた瞬間、足取りが重くなった。

図書館に向かおうとは思っていなかったはずだが、習慣に支配された僕の足は今日もまた同じ場所へと僕を連れて来てしまっていたのだ。

今行ったら、世界が変わるとすら思えた。

こんなことで動揺しているだなんて、滑稽だろうか。

猩猩緋の自転車は、停められていない。

それでも、僕は図書館に入ることにした。

現実問題、一刻も早く屋内に入らないと凍えそうだったからだ。