幼気で繊細な僕の精神は先日起きた過度の事態に耐えきれず、発熱というかたちをとって一時的に僕の生命活動を制限するに至った。

母親の証言によると僕は眠っている間うわごとのようにある言葉を繰り返していたらしい。



変態。



聞いていて気持ちの良い言葉ではない。

性的に倒錯しているという意味を孕んでいるが、実際は比較的マイルドな場合にも使われている。

僕自身、友人達にその言葉を放って来た回数は数知れないが、いざ自分が対象になった時のことを考えるとダメージは大きい。しかも、けして気心が知れているとは言えない女子に。

しかし、眠っている相手の手元に斯様に不気味な紙片を忍ばせるとは、正しく変態の所行だ。

しかももっと最悪なことに、あの汚物のような字が僕の字であると思われている可能性すらある。
誰が自分の名前を書いた色紙をわざわざ加工して持ち歩くだろうか。

頭が痛い。とても頭が痛いが、習慣というものは回復しつつある僕の身体に義務感という名のプレッシャーを与えはじめていた。


学校に行かなくてはいけない。


図書館に行かなくてはいけない。


彼女に、会わなくてはならない。